最高裁判所第一小法廷 昭和59年(行ツ)245号 判決 1985年9月12日
京都市中京区壬生御所ノ内町四五番地の一
上告人
田中康夫
右訴訟代理人弁護士
安田健介
京都市中京区柳馬場二条下る等持寺町
被上告人
中京税務署長 前田輝郎
右指定代理人
立花宣男
右当事者間の大阪高等裁判所昭和五六年(行コ)第二五号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五九年三月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人安田健介の上告理由について
所論の点に関する原審の判断は、原審の適法に確定した事実関係の下においては、正当として是認することができ、また、記録にあらわれた本件訴訟の経過に照らせば、原審の措置に所論の違法があるとはいえない。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高島益郎 裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一 裁判官 角田禮次郎 裁判官 矢口洪一)
(昭和五九年(行ツ)第二四五号上告人 田中康夫)
第一、上告代理人安田健介の上告理由
原判決は、次の判例に違反し、これは経験則違背でもあり、民事訴訟法三九四条の判決に影響をおよぼすこと明なる法令の違背ある場合に該当する。
1、最高裁判所(第一小法廷)昭和四三年(行ツ)第四九号所得税更正処分取消請求上告事件。
2、東京高等裁判所昭和五〇年(行コ)第七一号重加算税賦課決定取消請求控訴事件。
3、名古屋高等裁判所昭和四六年(う)第六八号所得税法違反被告控訴事件。
以上は、いずれも、商品先物取引を事業所得と認めた事例であり、事業性認定のために事業場は必要のないこと、経済的組織体も必要のないことを明言しているものである。原判決はこれら諸判決と全く矛盾するものであり、ただちに破棄を免れない。
第二、経験則違背で判決に影響をおよぼすこと明なる法令の違背の第二点は前記とも関連はするが、本件のごとき個人と法人の一体性については、租税実質主義、法人格否認の法理をもちださずとも、経験則により当然認めるべきものである。
第三、原審で弁論再開申請を採用しなかった点、事業税の対象に本件商品取引がなされている点の解明のためであり、審理不尽であり、判決に影響をおよぼすこと明なる法令の違背でもある。
以上